本日も建築にまつわる難読漢字問題、第二弾をお届けします。
それでは問題です。この字は何と読むでしょうか?
【 混凝土 】
ヒントはコチラの画像!
正解は、『コンクリート』と読みます。
おそらく知らない人のいないコンクリート。漢字で書くとこんな風になるのですね。。。仏蘭西(フランス)や家主貞良(カステラ)並みの、なかなか良い感じの当て字だと思います
さて、誰もが知ってるコンクリート
でも、建築に特に興味のない一般の方とお話していると「けっこう大雑把に捉えられているのだな」と感じることがあります。もちろんそれで当然なのではありますが、本日はコンクリートについて一般の方向けに、楽しく、そして何よりわかり易く解説してみたいと思います。
昔、現場で施主のおばちゃんとお話しているときのことです。
「壁のコンクリートにヒビが入ってるのよ、水が入ってきて家が潰れないか?心配で心配で」
との相談がありました。その家は木造の瓦屋根のお家だったので、どこにコンクリートでできた壁があるのか?と家の周りをぐるぐると回ったのですが。見当たりません。
「どの部分の壁ですか?」と訪ねたところ、すぐ目の前の壁を指差されました。
それは正真正銘の木造の壁で、外壁の仕上がモルタル塗りの上に、吹付け塗装で仕上げた当時の大変ポピュラーな工法の壁だったのですが、きっとおばちゃんは「モルタル仕上げ」のことを「コンクリート」と呼んでおられたのだと理解しました。また、人によっては「セメントの壁」などとよばれているかたもいたりとか・・・・・
建設業の人にとってはかんたんなことなんだけど、たしかにわかりにくいですよね・・・
ではコンクリートについて、三段活用風?はたまた、出世魚風?に学んでみましょう!
まず、そもそものいちばん大事な主となる原料、こちらがセメントと呼ばれる材料です。セメントは石灰石を焼成して石膏を加えて作った粉末状の材料で、水と混ぜることにより化学反応を起こして硬化します。
ホームセンターなんかでも大きな紙袋に入った姿を見かけますよね。安価な材料でコンクリートの製造には欠かせない材料なので世界中でものすごい量が日々生産されています。
日本においてのコンクリートの消費量は、国民一人当たり毎日4kg。主食であるお米でさえ150gの消費量ですから、いかに大量のコンクリートが消費されているのかがわかります
コンクリートを出世魚風に並べてみましょう
コンクリート = セメント + 水 + 砂 + 石
モルタル = セメント + 水 + 砂
モルタルペースト = セメント + 水
おわかりいただけるでしょうか?
セメントを主原料としてはいるのですが、配合されるものによって呼び名が変わってます。
水と混ぜたものは、モルタルペーストとかノロと呼ばれ、タイルを貼る際の接着剤として使われたり、コンクリートの建物の壁面などをモルタルペーストで薄くしごいて平滑にしたりすることに使われます。
そこに砂(細かい骨材)を加えたものがモルタル。
さきほどのおばちゃんのお家は木造の骨組みの上に板を貼り、その上からこのモルタルを塗った壁でできていたというわけです。
モルタルに石(粗い骨材)を加えたものがコンクリート。固く重さのある骨材を加えることで高強度のコンクリートに出世魚するというわけです。
また、よく聞く生コンという言葉は、これだけの材料を素早く現場で練り上げる(撹拌する)のは時間も手間も大変だ!という事で、工場で作った硬化前のコンクリートをミキサー車でずっと混ぜながら(止まると固まります)現場へ配達してくれる状態を指しています。
そして、強度やコストに優れたこちらのコンクリートを、鉄筋を組んだ型枠の中に流し込むと、鉄筋コンクリートの頑丈な構造物が完成します。
住宅雑誌などで「RC造」とあるのが reinforced concrete(強化コンクリート)、「鉄筋コンクリート造」の事をさしています。
セメントに始まって、ほんとに出世魚みたいに呼び名が変わっていくのがおもしろいですね
お好み焼きに例えると、練った小麦粉に具材やキャベツを入れるとしっかり厚みが出て、裏返せるのと同じというわけだ・・・・。
というわけで、現代社会になくてはならないコンクリート(セメント)
一体いつ頃から存在するのでしょうか?
確認された中で最古のコンクリートと呼ばれるものが約7000円前のイスラエルのイフタフ遺跡から発見されています。
馴染みの深いところでは古代ローマの時代のパルテノン神殿やコロッセオ、パンテオンなどの史跡もローマン・コンクリートと呼ばれる製法で建てられた建造物です。
「めちゃめちゃ昔からあるやんコンクリート!知らんけど・・」と、 調べてみて私も正直びっくりしました。
みんな大好きジブリ作品のモデルになった「ローマの水道橋」もローマンコンクリートの構造物。老若男女色々なところで目にしていたという訳です。
残念なことにコンクリートの建築材料としての輝きは一度ここで光を失います。
細かな装飾や華美な細工が可能な、石造りの建物が主流となりゴシック建築などと呼ばれ後世に引き継がれるようになりました。
コンクリートが再びスポットライトを浴びるのは産業革命の時代、様々な技術の進歩や、安価な製造コスト、世界中で材料が入手できることや、輸送手段の確立などにより一気に主要な材料の地位を確立しました。
日本での最初のコンクリート構造物はなんと、私の地元にありました。琵琶湖疎水に掛かる小さな橋がそれで、1903年に建造されたそうです。もしかして習った事なのかもしれないけれど、興味が無いことは覚えられないのですね・・・・
コンクリート黎明期の建築物としては、軍艦島の集合住宅群が有名です。
1916年ごろに建てられたのですが、「明治日本の産業革命遺産」として世界遺産にも登録されており、いまでは多くの観光客が訪れる人気スポットになっているとか、私も是非とも行ってみたいと思います
実は、私自身は木造志向でずっとやってきたのですが、今回コンクリートのことを色々調べてその奥の深さに魅了されました。なにより災害の多い我が国においてはこれからもコンクリートに色々お世話にならねばなりません。
沖縄県では鉄筋造(鉄骨造含む)の建物割合が95%、木造は5%です。木が少なかった、アメリカの占領下にあった等の理由もありますが、なによりとんでもない台風を想定してRC造が主流になったものと考えられます。
温暖化の影響なのか、我が国を襲う自然災害も年々暴力的になるなか、コンクリート造の価値が見直されるかもしれません。
一時「コンクリートから人へ」とか言って、コンクリートが随分邪険に、悪者イメージを植え付けられたことがあります。でも、先の大震災でも15mの津波を想定して作られた堤防が多くの人の命を守ったことも、八ッ場ダムが大水害から人々を守ったことも事実です。
やはりそこは適材適所で考えていくことが何より重要なのではないでしょうか?
それでは、本日はこれにて みなさま、明日も『ご安全に!』
(文責:壱号)