建設業のコロナ破綻、ジワリ増加

感染力の強いコロナウィルスデルタ株が猛威を奮い、連日感染者数の更新が報道されている。
早く収束を迎えかつての日常を取り戻したいとの思いは、すべての国民に共通であるが残念ながらまだまだ収束が見通せないのが現状である。
そんな中、中小建設業にジワリとコロナの影響があらわれ始めている。
比較的影響の少なかった業界
飲食業・小売・観光産業などコロナの直撃を受けた業種に比べると、建設業への影響はこれまで少なかった。一時期中国からの資材調達ができず工事がストップするような事態も発生したが、中国の国内が落ち着きを取り戻すとともに沈静化した。
2020年5月のアンケート調査の結果をみても『影響を受けている』と答えた企業が平均78.7%であったのに比べ、建設業では54.4%と10産業中最も低いという結果であった。
これは首都圏でのオリンピック特需や都市圏の再開発ラッシュ、地方においては活発な公共工事やインフラ整備によるミニバブルの影響が大きかったといえるであろう。
ウッドショックと特需のピークアウト
しかし、2020年終盤からジリジリとコロナ関連破綻が増加に転じ、そこへ北米発のウッドショックが、さらなる追い打ちをかける事態となった。
アメリカ史上例を見ない大規模な金融緩和政策により、行き場を失ったお金が住宅市場へ流れ込み、まさにバブルと言える建築ラッシュ。国内需要を優先させるため、輸入材の30%をしめる北米産の木材が日本へ供給されない。という緊急事態が発生した。木造建築を主要な取扱商品とする全国の地場工務店などにとってはまさに死活問題であった。
現在は少し落ち着きを取戻しているが、こちらもまぎれもないコロナの影響と言えるであろう。受注物件の工期延長や着工の延期、また資材高騰による利益の喪失により、中小建設業者の経営環境は真綿で首を締めるように悪化している。
工事減少と競合激化
また、ミニバブルの様相を呈していた特需にも一旦のピークアウト感がある。オリンピック関連工事も一段落するであろう。大手ゼネコンの受注残はオリンピック優先で進めてきた分他の案件が積みあがっているので当面堅調であろうと思われるが、中小の建設業者にとってはさらに厳しい状況を向かえることになりそうだ。
両者が手掛ける工事の規模や質にはそもそも大きな違いがある。商店や店舗、小規模なテナントビルや事務所など比較的小規模な工事は、大手ゼネコンの守備範囲ではなく、ほぼ100%中小零細事業者が請負っている。コロナ過で相次ぐ、出店計画の見直しや撤退が、経営体力の乏しい中小零細の建設業者が直撃しているのだ。
残念ながらコロナの終息が見えない環境下で、出店計画が増加するとは見通せない。
建設業界では昔から受注が減少すると規模の小さな案件に着目する。という摂理のようなものがある。活況時には見向きもしなかった規模の工事に、少々厳しい値段であっても受注に動く。という訳だ。多くの社員の雇用を守るために当然の事なのであるが、時として行き過ぎた安値合戦を誘発しているのも事実であろう。背に腹は代えられないという訳か。
私自身はこれこそが、中小零細の生産性が上がらない理由の一つなのではなかろうかと考えている。
コロナ禍の影響が様々な業界にジワジワと表れている。建設業界にあっても。業界人さえ気付かない間に足元が揺らぎ始めている。いま出来ることには限りがあるかもしれないが、コロナ後の飛躍の為にも、生産性向上の為の準備を進めて頂きたいと切に願う。
(壱号)