工事監理とは?施工管理の違いについても解説!

目次

混同されやすい「工事監理」と「施工管理」

建設業界では日々さまざまな専門用語が飛び交いますが、中でも「工事監理」と「施工管理」は特に混同されやすい言葉のひとつです。実際に、現場や発注者とのやり取りの中で「監理」と「管理」が曖昧なまま使われてしまい、トラブルの原因になるケースも少なくありません。

どちらも「工事を適切に進めるための管理業務」という点では共通していますが、その役割や立場、責任範囲は大きく異なります。簡単に言えば、「工事監理」は発注者側の立場から設計図通りに工事が行われているかをチェックする役割。一方の「施工管理」は、施工者側として現場の品質や工程、安全を実際にコントロールしていく仕事です。

このコラムでは、そんな似て非なる「工事監理」と「施工管理」の違いについて、建設業に携わる皆様に向けて、わかりやすく解説していきます。すでに実務経験のある方にも「なるほど」と思っていただけるよう、現場の視点も交えながらご紹介していきます。

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工事監理とは?

定義と目的

「工事監理(こうじかんり)」とは、建築工事が設計図書(図面や仕様書)に基づいて正しく行われているかどうかを確認・監督する業務を指します。
建築基準法第2条にも定義があり、設計者(または建築士)が、発注者(施主)の立場に立って工事の品質を担保することが求められています。

つまり、設計した通りに建物がつくられているかどうかを現場でチェックする役割です。安全性や法令遵守はもちろん、材料や仕上がりに対する設計意図が反映されているかまで確認することが求められます。

このように、工事監理は単なる「確認作業」ではなく、建物の完成品質に大きく関わる重要なプロセスなのです。

担当者の資格と立場(設計者・建築士)

工事監理を担当するのは、主に一級建築士や二級建築士などの有資格者です。多くの場合は、建物の設計を行った設計者がそのまま監理も担当します。設計意図を正確に理解している人物が現場を見ることで、図面と施工内容のズレを見逃しにくくなります。

立場としては、あくまで発注者側(施主側)の代理人。現場で直接作業を指示したり、職人に細かく段取りを伝えたりする立場ではありません。そのため、施工者側の「施工管理」とは立場が明確に分かれています。

主な業務内容(図面通りの施工確認など)

工事監理の主な業務は以下のような内容です

  • 設計図通りに施工されているかの確認
  • 使用材料が図面や仕様書に合致しているかの確認
  • 構造、安全性、法令などの遵守状況のチェック
  • 現場での是正指示や報告書の作成
  • 中間検査や完了検査への対応

現場では、時に図面通りに施工できない事情が生じることもあります。その場合、設計者としての判断力をもとに、適切な代替案を現場と調整する場面もあります。

このように、工事監理は「設計」と「施工」の間に立ち、品質を守る最後の砦とも言える存在です。

施工管理とは?

定義と目的

「施工管理(せこうかんり)」とは、建設現場において工事を安全かつ円滑に進め、計画通りに完成させるための現場運営全般の管理業務を指します。
建物の品質や安全、工期、コストなど、あらゆる面においてバランスよく管理するのが目的です。

簡単に言えば、「現場を仕切る司令塔」として、日々の作業がスムーズに進むように調整・指示を行う役割です。多くの職人や協力会社が出入りする現場では、段取りを間違えると納期遅れや事故のリスクが高まります。施工管理は、そうしたトラブルを未然に防ぐための要となる存在です。

担当者の資格と立場(施工業者・現場代理人)

施工管理を行うのは、施工会社やゼネコンに所属する技術者です。工事現場では「現場代理人」と呼ばれる立場の人が、実質的に現場を取り仕切ることが多く、作業員や協力会社の取りまとめ役を担います。

必要とされる資格は、「建築施工管理技士(1級・2級)」をはじめ、電気・管工事など専門分野ごとの管理技士資格が挙げられます。

立場としては、施工者側に位置し、発注者や設計者とやり取りしながらも、自社や協力会社の作業全体を統括するポジションです。発注者の代理人である工事監理とは異なり、現場の最前線で実務を動かす存在といえます。

主な業務内容(工程・品質・安全などの管理)

施工管理の仕事は多岐にわたりますが、大きく分類すると以下のような管理項目に分かれます

  • 工程管理:作業の進捗がスケジュール通りか確認・調整
  • 品質管理:設計図や仕様書に基づいた正しい施工が行われているかをチェック
  • 安全管理:事故を防ぐための現場環境づくり(KY活動・安全パトロールなど)
  • 原価管理:予算内で収めるためのコストコントロール
  • 環境管理:近隣対応や騒音・粉塵対策などへの配慮

これらの業務を日々同時並行でこなすため、段取り力と現場対応力が問われる仕事です。職人や協力会社との信頼関係づくりも非常に重要なポイントになります。

施工管理は、現場の「実行部隊」として、図面をかたちにする役割を担っています。設計や監理と連携しながら、「安全・安心・確実な施工」を実現する要となる職種なのです。

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工事監理と施工管理の違いを図で解説

建設現場では、「工事監理」と「施工管理」がそれぞれの役割を果たしていますが、両者の立場や業務範囲、責任の所在は明確に異なります。以下の表で、両者の違いを整理してみましょう。

区分工事監理施工管理
立場発注者側(施主の代理)施工者側(工事を請け負う側)
主な担当者設計者、建築士現場代理人、施工管理技士
主な目的設計図通りに施工されているか確認工事を安全・確実・効率的に進める
業務範囲施工状況の確認、設計意図の反映確認工程・品質・安全・原価・環境管理
責任の所在設計図通りの完成を監督する責任実際の施工の品質・進捗に責任を持つ
関係法令建築士法、建築基準法など労働安全衛生法、建設業法など

立場の違い

まず最も大きな違いは「立場」です。工事監理は発注者(施主)側の視点で、施工のチェックを行う役割。一方、施工管理は施工者(工事を実施する会社)側の視点で、実務を進めていく役割です。

たとえば、同じ現場にいても、監理者は「図面通りになっているか」「施工が適切か」を監視するのに対し、施工管理者は「今日の作業が計画通り進むか」「安全に配慮されているか」に集中します。

業務範囲の違い

工事監理は、主に「確認と是正指示」が中心。施工状況をチェックし、問題があれば是正を求める立場です。

施工管理はそれとは対照的に、現場全体の運営を担います。工程の段取り、職人との打ち合わせ、品質・安全の管理など、「実行と調整」が主な業務になります。

責任の所在の違い

工事監理は、設計者としての責任を持ちます。設計意図が正しく反映されているかをチェックする立場として、監理報告書などの記録も残し、行政への対応も含まれます。

一方で施工管理は、現場の責任者として、工事全体の品質や安全性に直接的な責任を負います。万が一事故や不具合が発生した場合、その対応の最前線に立つのは施工管理者です。

このように、「工事監理」と「施工管理」は、それぞれに重要な役割を担っています。どちらが上というわけではなく、互いの立場と業務を理解し、連携することが良い現場づくりにつながります

よくある誤解とトラブル事例

建設業界では、「工事監理と施工管理」という言葉が似ていることから、発注者・現場関係者の間で混乱が生じやすくなっています。ここでは、現場で実際に起きがちな誤解やトラブルの一例をご紹介します。

「監理」と「管理」の混同による発注ミス

特に多いのが、「工事監理=施工管理」だと思い込んでしまい、本来必要な監理業務が契約上抜け落ちてしまうケースです。

たとえば、建築主が設計事務所に「設計図だけお願いしたい」と依頼したつもりが、実際は「監理」も含まれていた、あるいは逆に「監理」をお願いしたつもりが、契約には記載がなくて施工会社まかせになっていた…というようなパターンが見られます。

このような行き違いがあると、完成後の瑕疵(かし)や設計と違う仕上がりに対して、誰が責任を負うのか曖昧になります。最悪の場合、訴訟トラブルに発展することもあります。

役割分担の不明確さによる現場混乱

現場では、工事監理者と施工管理者が同時に動いていますが、その役割や指示系統がはっきりしていないと、混乱のもとになります。

例えば、監理者が現場で「この納まりはおかしい」と指摘したが、施工側の現場代理人は「これは工程的に無理」と判断して工事を強行。結果として、後日手直しが必要になり、追加費用や工期の遅れにつながった、というケースもあります。

こうした混乱は、「どこまでが監理の範囲か」「誰の指示を優先すべきか」が現場で明文化されていないことが原因です。特に中小規模の案件や、初めての発注者が関わる現場では起こりがちです。

これらの事例からも分かるように、「監理」と「管理」の違いをきちんと理解し、関係者全員で役割と責任を明確にすることが、円滑な工事のカギになります。
単なる言葉の違いに見えて、実は現場の品質・安全・信頼に直結する重要なポイントなのです。

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建設現場での円滑な連携のために

工事監理と施工管理がスムーズに連携してこそ、良い建物が完成します。しかしそのためには、両者の業務をただ並行させるだけでなく、事前に役割を整理し、現場での連携体制を整えておくことが不可欠です。

明確な役割分担の必要性

工事監理と施工管理が、それぞれの立場や責任を理解し合わずに現場に入ると、指示の食い違いや判断のズレが発生しがちです。

たとえば、工事監理者が「この部分は設計通りに戻してほしい」と是正を求めても、施工管理者が「すでに発注済みで変更が難しい」と返すようなことがあります。これは設計内容の確認と工程管理のタイミングがすれ違っているから起こるトラブルです。

このような事態を避けるには、事前に「誰が、どの段階で、何を判断するのか」を取り決めておくことが重要です。たとえば、設計変更が必要になったときの報告フローや、仕上がりの確認タイミングなどを、契約時や着工前のキックオフミーティングで共有しておくと、現場の混乱を防げます。

発注者への説明のポイント

もうひとつ大切なのは、発注者(施主)への丁寧な説明です。
「監理」と「管理」の違いは、建設に携わる人でも混同しやすいため、初めて工事を依頼する施主にはなおさら伝わりづらいものです。

発注者が両者の役割を正しく理解していないと、「施工会社に全部まかせれば大丈夫」と思い込んで、監理を省略してしまうケースも少なくありません。その結果、図面通りに仕上がらず、完成後に不満やトラブルにつながることもあります。

そのため、設計者や施工者は、契約前の段階で「監理は発注者の代理として施工をチェックする役割」「施工管理は現場を運営・実行する役割」と、図や具体例を交えて説明するのが効果的です。
発注者自身が役割を理解することで、信頼関係も築きやすくなり、工事の透明性と満足度が高まります

それぞれの役割を理解してトラブルを防ぐ

「工事監理」と「施工管理」。
呼び方は似ていますが、その役割や責任、立場は明確に異なります。工事監理は設計者の視点から図面通りに工事が進んでいるかを確認し、施工管理は現場の安全・品質・工程などを統括して、建物の完成に向けて実務を回します。

現場での混乱やトラブルの多くは、この2つの業務があいまいなまま進んでしまうことから生まれています。
だからこそ、それぞれの立場や役割を明確にし、関係者同士が適切に連携を取ることが重要なのです。

また、発注者にとっても、「設計した人が工事中に何をしてくれるのか」「施工会社がどこまで責任を持つのか」といった点を正しく理解しておくことで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。

建物づくりは、関わる人すべての協力で成り立っています。
それぞれのプロが、それぞれの役割をきちんと果たすことで、より安全で、質の高い建築物が生まれるのです。

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「現場へGO!」を活用すれば、現場の状況やトラブルが発生した際、その情報を即座に共有できます。スマートフォンやタブレットを利用することで、現場での報告内容が瞬時にクラウド上に反映され、事務所や離れた場所にいる管理者もすぐに状況を把握することが可能です。これにより、従来の電話や手書きの報告に比べて大幅な時間短縮が実現し、迅速な意思決定を後押しします。さらに、情報がデジタルで一元管理されるため、過去の記録を簡単に検索・参照でき、報告漏れや伝達ミスを防ぎます。

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建設現場では、安全教育やKY(危険予知)活動が欠かせません。しかし、それらの教育が確実に行われているか、記録が残っていない場合、万が一の際に対応が難しくなることがあります。「現場へGO!」では、これらの活動の実施状況をデジタルで記録し、誰がいつどの教育を受けたのかを明確に管理できます。教育内容を確認したり、必要に応じて再教育を実施するための指標としても活用できるため、現場全体の安全意識を高めるサポートをします。

チェックリストと点検表を効率的に管理

建設現場の日常業務には、足場や重機の点検、作業前の安全確認など、多岐にわたるチェック作業が含まれます。従来の紙ベースの管理では記録の散逸や確認作業の手間が課題でしたが、「現場へGO!」ではこれらをデジタル化し、一元管理することで課題を解決します。例えば、点検結果をすぐにアプリに入力すれば、その記録がすぐにクラウドに保存されます。必要なときにはスマートフォンやパソコンから簡単にアクセスして確認や出力が可能です。この仕組みにより、監査対応や報告書作成の作業負担が軽減されるだけでなく、過去の記録を基にしたトレンド分析や改善活動もスムーズに行えます。

施工管理を効率化することで、工事監理者との連携もさらに強化されます。「現場へGO!」を活用して、トラブルを未然に防ぎ、よりスムーズな現場運営を目指してみませんか?

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