経審(経営事項審査)とは?
経審(経営事項審査)とは?基本知識と概要
公共工事を請け負うためには、一定の条件を満たしていることを証明する必要があります。その条件の一つが「経営事項審査」、通称「経審」です。経審は、公共工事に参加する企業が、適切な経営基盤を持ち、工事を安全かつ確実に遂行できる能力を備えているかを判断するための仕組みです。
経審の定義
経審(経営事項審査)は、建設業許可を受けた企業を対象に、その経営状況や技術力を数値化し、客観的に評価する制度です。国土交通省が基準を定めており、具体的には「経営規模」「経営状況」「技術力」などの複数の指標をもとに点数が算出されます。この点数は「総合評定値」と呼ばれ、公共工事を入札する際の資格要件の一つとして使用されます。
対象となる企業・業種
経審の対象となるのは、建設業許可を取得している企業全般です。特に以下の条件を満たす企業は経審を受けることが義務付けられています:
- 国や地方自治体が発注する公共工事の入札に参加する企業
- 工事の金額が500万円以上の案件に従事する企業(建築一式工事の場合は1,500万円以上)
該当する業種は幅広く、土木工事や建築工事だけでなく、電気工事や管工事、塗装工事など多岐にわたります。中小企業から大企業まで、すべての建設業者が対象となる可能性があります。
経審の目的と重要性
経審が導入された背景には、公共工事の透明性や信頼性を確保するという目的があります。具体的には以下のような点で重要な役割を果たしています:
- 企業の信頼性を判断する基準
公共工事を安定的に遂行できる企業であることを、客観的な指標で示します。これにより、発注者はリスクを最小限に抑えることが可能です。 - 公平な競争環境の提供
企業間の競争を適切に保つための仕組みとして機能します。点数による評価は主観を排除し、透明性を確保します。 - 企業の成長を促進
点数アップを目指して経営改善や技術力向上に取り組む企業が増えることで、建設業全体の水準が向上します。
経審は単なる手続きではなく、企業の実力を可視化し、公共工事の信頼性を支える重要な制度です。そのため、経審を正しく理解し、適切に準備することが、建設業者にとって大きなメリットにつながります。
以上のように、経審は建設業界において欠かせない制度であり、公共工事を目指す企業にとって基本的な知識として押さえておくべきものです。
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経審が必要なケースとは?申請のタイミングと流れ
経審(経営事項審査)は、公共工事を受注する際の大切なステップです。しかし、すべての企業が必要になるわけではなく、特定の条件を満たす場合に必要となります。ここでは、経審が必要なケース、申請のタイミング、そして流れについて詳しく解説します。
公共工事を受注するための条件
経審が必要となるのは、主に国や地方自治体が発注する公共工事を受注する際です。以下の条件に該当する場合、経審を受けることが求められます:
- 建設業許可を取得していること
経審を受けるには、まず建設業法に基づく建設業許可が必要です。この許可がない企業は経審を受けられません。 - 経営事項審査を受審していること
公共工事の入札には、経審の結果として算出される「総合評定値」が必要です。この評定値が発注者の基準を満たしていなければ、入札に参加できません。
経審の申請スケジュール
経審の結果は、通常1年間有効です。そのため、有効期限が切れる前に更新手続きを行うことが重要です。申請のタイミングは次のようになります:
- 新規申請の場合
公共工事への参入を目指す場合、必要な書類を準備し、初めて経審を受ける必要があります。スケジュールには1~2ヶ月程度の余裕を持つことが推奨されます。 - 更新申請の場合
経審の有効期限が切れる前に申請する必要があります。通常、有効期限の2~3ヶ月前から準備を始めるのが理想的です。 - 変更があった場合の再申請
企業の財務状況や経営規模、技術力に大きな変化があった場合、再申請することで評定値を更新できます。
申請タイプ | 内容 | 推奨スケジュール |
新規申請 | 公共工事への参入を目指す場合、必要書類を準備し初めて経審を受ける。 | 申請までに 1~2ヶ月程度の余裕 を持つ。 |
更新申請 | 経審の有効期限が切れる前に更新手続きを行う。 | 有効期限の 2~3ヶ月前から準備開始。 |
変更があった場合の再申請 | 財務状況、経営規模、技術力に大きな変化があった場合に評定値を更新するため再申請を行う。 | 状況変化後、速やかに手続き開始。 |
スケジュールの管理を怠ると、公共工事への参加資格を失うリスクがあるため、計画的に進めることが重要です。
必要書類と準備するべき情報
経審の申請には、企業の経営状況や実績、体制に関する詳細な情報が求められます。
以下は一般的に必要とされる書類の一覧です:
1. 財務関係の書類
- 決算書(直近の決算期のもの、通常3期分)
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書
- 個別注記表
- 法人税申告書の写し
- 別表一(一)
- 別表四、五(一)、五(二)など
- 消費税及び地方消費税申告書の写し
2. 経営状況分析関係の書類
- 経営状況分析申請書(所定の様式)
- 経営状況分析通知書(分析機関が発行したもの)
3. 建設業許可関係の書類
- 建設業許可通知書の写し
- 許可申請書の写し(直近の更新時のもの)
- 決算変更届の写し
4. 技術者関係の書類
- 技術者一覧表(所定の様式に記載)
- 技術者の資格証明書の写し(国家資格証明書や登録証など)
- 配置技術者の実務経験証明書(必要な場合)
5. 工事関係の書類
- 工事経歴書(許可業種ごとに作成)
- 工事請負契約書の写し(主要工事のみ、必要に応じて)
- 工事台帳
6. その他の必要書類
- 納税証明書(国税・地方税の未納がないことを証明)
- 法人登記簿謄本(登記事項証明書)
- 印鑑証明書(法人または代表者のもの)
書類を準備する際には、細かな不備が発生しやすいため、事前にチェックリストを作成するとスムーズです。また、経審に詳しいコンサルタントに依頼するのも一つの手段です。
公共工事を目指す企業にとって、経審は避けて通れない重要なステップです。事前準備を徹底し、タイミングを逃さずに申請することで、スムーズに手続きを進められるでしょう。
経審の評価基準と点数の仕組みを徹底解説
経営事項審査(経審)は、企業の経営力や技術力を数値化し、公共工事の入札資格を判断するための重要な制度です。その評価基準は、いくつかの主要な項目に分かれており、それぞれの点数が最終的な「総合評定値」として算出されます。ここでは、経審の評価基準や点数の計算方法、さらに点数を向上させるためのポイントについて詳しく解説します。
経審の主要項目
経審は、以下の3つの主要な評価項目に基づいて点数が計算されます。それぞれの項目が企業の総合力を示す重要な要素となっています。
- 経営状況(Y評点)
企業の財務状態や安定性を評価する項目です。財務諸表のデータをもとに、以下のような指標が用いられます:- 自己資本比率
- 総資産回転率
- 営業利益率
- 借入金依存度
- 経営規模(X評点)
企業の規模を測る指標で、以下の項目が評価対象となります:- 完成工事高(過去2年間の工事実績)
- 自己資本額
- 常勤の技術者数
- 技術力(Z評点)
技術者の資格や経験、企業の施工能力が評価されます。具体的には:- 技術者の保有資格
- 技術職員数
- 工事種別ごとの施工実績
これらの評点に加え、地域貢献や社会性に関連する加点要素も存在します(例:災害時の貢献、環境保護活動など)。
点数の計算方法
経審の総合評定値(P点)は、以下のようにして計算されます:
P=(0.25×X)+(0.15×Y)+(0.6×Z)+(加点項目の点数)P = (0.25 \times X)+(0.15 \times Y)+(0.6 \times Z)+(加点項目の点数)P=(0.25×X)+(0.15×Y)+(0.6×Z)+(加点項目の点数)
ここで、各項目の重要性に応じた重み付けがなされています。技術力(Z評点)が最も高い比重を占めており、企業の施工能力が特に重視されることが分かります。
加点項目は、自治体ごとに異なる場合があり、地域ごとの条件に応じた評価が行われます。これにより、地域社会への貢献度や企業の取り組みが反映される仕組みになっています。
評価を上げるためのポイント
経審で高い点数を獲得することは、公共工事の受注において非常に重要です。以下のポイントに留意することで、評価の向上が期待できます:
- 財務状況の健全化
財務諸表を整備し、自己資本比率や借入金依存度を改善することで、経営状況(Y評点)の向上が可能です。具体的には、利益の確保や余剰資金の蓄積を意識することが有効です。 - 技術者の資格取得を推進
技術力(Z評点)は、保有する資格や施工実績に直結します。従業員が取得可能な資格をリストアップし、計画的な研修や支援を行うことで、スコアアップにつながります。 - 完成工事高を増やす
過去2年間の実績が反映されるため、年間の工事高を増やす努力が重要です。特に、安定的に工事を受注し、質の高い施工を継続することが評価されます。 - 加点要素を活用する
地域貢献活動や環境保護への取り組みを積極的に行うことで、加点項目のスコアを向上させることが可能です。例えば、自治体主催の活動に参加したり、SDGs関連の施策を実施することが効果的です。 - 計画的な経審対策を実施
事前に経審の要件を分析し、どの項目で点数が向上可能かを検討することが重要です。専門のコンサルタントに相談することも、効率的な対策につながります。
経審の点数は、企業の信頼性と実力を示す重要な指標です。日々の経営努力と計画的な対策を通じて点数を向上させることで、公共工事の受注機会を広げることができます。
専門家のサポートの活用
経審の手続きは複雑なため、専門家のサポートを活用することで効率が大幅に向上します。以下のような専門家がサポートを提供しています:
- 行政書士
行政書士は、経審の申請手続きや書類作成を代行してくれる専門家です。特に、初めて経審を受ける企業や、時間に余裕のない企業におすすめです。 - 経審コンサルタント
経審の点数を効率的に引き上げるためのアドバイスを提供します。例えば、技術者の資格取得計画や財務改善の具体的な方法を提案してくれます。 - 会計士や税理士
財務諸表の作成や経営状況の見直しに関しては、会計士や税理士が頼りになります。特に、借入金依存度や利益率の改善が求められる場合に有効です。 - 自治体の窓口
自治体によっては、経審に関する無料の相談窓口を設けている場合があります。手数料がかからないため、まずはここで基本的なアドバイスを受けるのもよいでしょう。
よくあるミスとその回避方法
経審では、書類の不備や誤った手続きが審査の遅延や低評価につながることがあります。以下によくあるミスとその回避策をまとめました:
- 必要書類の不備
書類が揃っていない、または古い情報が記載されている場合があります。提出前に必ずチェックリストを作成し、全ての書類を確認してください。 - 財務データの不一致
財務諸表に記載されている数字が申請書と一致していないケースがあります。経理担当者と申請書作成者の間でしっかりと情報共有を行いましょう。 - 技術者資格の申告ミス
技術者の資格や経験年数が正しく反映されていないことがあります。資格証明書を再確認し、記載内容が正しいことを確認してください。 - 期限切れの申請
経審の有効期限を忘れることで、公共工事の入札資格を一時的に失うケースがあります。カレンダーやスケジュール管理ツールを活用し、期限を確実に把握しましょう。 - 評価基準の誤解
評価基準を正確に理解していない場合、準備の重点がずれることがあります。例えば、完成工事高や技術力の加点要素を見落とすことが典型的です。評価基準を詳細に把握し、重点的に取り組む部分を明確にしましょう。
経審の準備は一見すると煩雑ですが、事前の計画と専門家の活用で大幅に効率化できます。これらのポイントを押さえて、確実に高評価を得られるよう準備を進めていきましょう。
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経審の点数を上げるための具体的な戦略
経営事項審査(経審)の点数を向上させることは、公共工事の受注機会を拡大するために非常に重要です。特に中小企業にとっては、競争力を高めるために計画的な取り組みが必要です。以下では、技術者の育成、経営状況分析の改善、社内体制の強化に焦点を当てて、具体的な戦略を解説します。
技術者の育成・資格取得のすすめ
経審の評価項目の中でも、技術者の数や資格は大きなウエイトを占めます。適切な技術者を育成し、資格取得を促進することが点数向上の鍵となります。
- 計画的な資格取得支援
技術者が経審で高く評価される資格(例えば一級施工管理技士や技術士など)を取得できるよう、計画的に支援を行いましょう。資格取得のための費用補助や、学習時間を確保する仕組みを導入することで、社員のモチベーションを高めることができます。 - スキルマップの活用
社内の技術者のスキルや資格を可視化するスキルマップを作成しましょう。これにより、どの分野に技術者が不足しているかを把握し、重点的に育成を進めることができます。 - 外部研修の活用
建設業協会や専門学校が提供する外部研修プログラムを積極的に活用することで、社内だけでは補えない専門知識を技術者に習得させることができます。
経営状況分析の改善方法
経営状況分析のスコアを改善するには、企業の財務状況を強化することが必要です。具体的には以下の方法を検討してください:
- 収益性の向上
経常利益率や自己資本比率が評価されるため、コスト管理の徹底や効率的な運営が重要です。例えば、原材料の仕入れ先を見直したり、工事プロセスの効率化を図ることで、利益率を向上させることができます。 - 財務の健全化
借入金を減らし、自己資本比率を上げることが評価ポイントとなります。過剰な負債を避けるため、資金調達計画を見直すことが有効です。 - 外部専門家の活用
公認会計士や税理士と連携し、財務諸表の分析や改善ポイントの特定を行いましょう。これにより、資金繰りや利益率の向上が実現しやすくなります。
社内体制強化の取り組み
経審点数の向上には、組織全体の基盤を強化することも欠かせません。社内の体制を見直し、業務効率やコミュニケーションを改善しましょう。
- 総合的な管理体制の整備
経審に関わる情報やデータを一元管理する体制を構築します。例えば、クラウドベースのシステムを導入することで、申請書類の作成や過去のデータの参照が容易になります。 - 定期的な教育プログラムの実施
経審制度や評価基準の変更に対応するため、社員向けの教育プログラムを定期的に実施しましょう。これにより、全社員が制度を理解し、一丸となって改善に取り組むことができます。 - リスク管理の強化
労働安全衛生管理やコンプライアンスを徹底することで、評価を下げるリスクを最小限に抑えることができます。また、こうした取り組みは企業の信頼性向上にもつながります。
経審の点数を上げるためには、単なる書類作成ではなく、長期的な視点での計画と実行が必要です。技術者の育成、財務の改善、そして社内体制の強化をバランスよく進めることで、持続可能な成長と公共工事の受注機会の拡大を目指しましょう。
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